接種要注意者

 接種の判断を行うに際し、注意を要する者(接種要注意者)

 (1)予防接種実施要領に規定する接種要注意者は以下のとおり。

 @ 

心臓血管系疾患腎臓疾患肝臓疾患血液疾患及び発育障

  害

等の基礎疾患を有することが明らかな者

 A 前回の予防接種で

2日以内に発熱のみられた者、又は全身性発

  疹等の

アレルギ−を疑う症状を呈したことがある者

 B 

過去にけいれんの既往のある者

 C 

過去に免疫不全の診断がなされている者

 D 接種しようとする

接種液の成分に対して、アレルギ−を呈す

  るおそれのある者

 (2)各項目の考え方

  @ 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患及び発育障害等の基礎疾患を有することが明らかな者

  ア.

心臓血管系疾患を有する者

   日本小児循環器研究会(現日本小児循環器学会)は昭和46年に接種をしてはならない者につき、以下のように定めている。(小児外科・内科4:955,1972)

 ・心不全のある者

 ・無酸素発作をくり返す者

 ・活動性のリウマチ熱、リウマチ性心炎がある者

 ・心筋炎、心膜炎に罹患している者

 ・予後が非常に悪く、現在はよくても余命が短いと判断される者

 ただし、現時点では例えば心不全がコントロ−ルされている状態にあれば、接種の考慮対象としてメリット、デメリットを検討していくことになる。

 

イ. 

腎臓疾患を有する者

 日本小児腎臓運営委員会答申(昭和60年治療67:111.1985)では、接種をしてはならない者は以下のとおりとされている。

・副腎皮質ホルモン剤又は免疫抑制剤使用中止後6カ月以内の者

 ・急性及ぴ慢性腎不全の者

 ・急性期、増悪期及び症状固定後6カ月以内の者

 ・その池、医師が不適当と認めた者

 また、水痘ワクチン研究班のネフロ一ゼ症侯群ヘの水痘ワクチン接種基準は以下のとおりであり、他のワクチンヘも適応できる。

 ・寛解期に接種するのを原則とするが、少なくとも病初期及びプレドニゾロンの投与量が2mg/kg以上の時は接種してはいけない。

 ・細胞性免疫能が保たれていること(リンパ球幼若化反応、ツ反、PHA皮内テスト等で確認)

 

ウ.

悪性腫瘍

 原則として、完全寛解期に入って、細胞性免疫能が回復した時点で接種を行う。維持療法中でも必要性の高い麻しん、水痘等については、積極的に免疫能チェックを実施し、タイミングをみて接種を行う。

 

 

エ.

HIV惑染者

 HIV感染者及びエイズ患者に対しては、ポリオ及びBCGの予防接種を行ってはならないが、DPT、麻しん、風しん、日本脳炎及びインフルエンザの予防接種を行うことはできる。

 

オ. 

重症心身障害児(者

 重症心身障害児(者)は、けいれん、重症脳障害の合併のある者が多く、現在まで接種を受けていない者が多い。 しかし、デイケア、施設入所等接触機会も増加している現在、予防接種の必要性が高まっている。現在の日本の環境条件からみて必ずしもすベての予防接種を必要としないが、我が国でも流行があり、感染機会のある疾病について接種を考えていくこととなる。

 接種基準は以下のように設定する。

 ・日常観察されていない過度の緊張等が観察された状態では、原因が判明するまで接種しない。

 ・早朝体温が日常平均値より1℃以上低い場合は接種しない。

 ・けいれんの既往歴があるか、発熱による緊張が高まる症例に麻しんワクチンを接種すみ場合には、接種当日から主治医の判断により抗けいれん剤を服用させる。

 カ.

未熱児に対する予防接種

  生下時からの合併症がないことを確認の上、以下の要領で接種を行う。

 ・予防接種の原則は一般乳児と同様に適用する。

 ・ワクチンの接種開始は、出生後日齢、歴月齢を適用する。

 キ. 

その他基礎疾患がある者

  以下の事項を基本条件として主治医と接種医が可能と認めれば接種する。

 ・基礎疾患の診断がついていること

 ・抗体産生能に異常が考えられないこと

 ・基礎疾患が疾病として安定期にあること

A 

前回の予防接種で2日以内に発熱のみられた者、又は全身性発疹等のアレルギ−を疑う症状を呈したことがある者このような場合には、再接種後に再度症状が現われることが

あるため、注意を要する。軽度の発熱の場合には、接種を行うことができるが、高熱や全身性発疹の場合には、対象者の年齢、疾病の流行状況等を勘案して、接種の可否を決める。

B 

過去にけいれんの既往のある者

 ア. けいれんに対する考え方

  乳幼児期のけいれんは、多くは良性の熱性けいれんであるが、一部においては、てんかんヘの移行、ごくまれに脳変性代謝疾患、脳血管疾患等のはじまりのことがある。また、乳幼児期では発達の評価が困難な例もあり、このような症例に予防接種をすると、接種前から存在した「かくれた発達の遅れ」であるのか、「予防接種に関連する発達の遅れ」であるのかを区別することは難しく、予防接種の副反応としてとらえられてしまうおそれがある。しかし、けいれん発生後、どの程度期間をとれば、良性のけいれんか又は神経学的な基礎疾患があるのか、その本態を明らかにすることは、予診段階で100%解明することは現実的には不可能である。

イ.

接種の方法

 (ア)単純性熱性けいれんと診断がついた小児には、一般児と同様に接種する。

  ただし、発熱時の対応については、解熱剤、抗けいれん剤の使用等、事前に十分指導をしておく必要がある。

 (イ)

抗けいれん剤の投与を受けている者であっても、以下の基準に該当する者については、保護者の了解のもとに接種する。

・発症後1年を経過し、けいれんの診断はついているが、時々けいれん発作のある者で、当該予防接種が基礎疾患の治療管理上必要と主治医が判断し、保護者が希望している者

・けいれんは残っていても脳障害が固定しており、主治医が接種を治療上必要と認めた保護者が希望している者

 (ウ)

接種する予防接種の順序については、年齢、環境(集団生活の有無)、脳障害の程度等によって、それぞれの必要性が異なるので主治医の裁量で決定する。過去にDPTワクチンは安全性が低いように記載されているが、昭和56年8月以後百日せきワタチンがコンポ−ネントワクチンに変更されて以来、局所反応以外の副反応はほとんどな    い。

C 

過去に免疫不全の診断がなされている者

 ア.免疫産生異常をきたすおそれのある疾病を有する者白血病や悪性リンパ腫等に対しては、生ワクチンはワクチンウイルスの感染を増強あるいは持続させる可能性があるの

 で、接種は避けたほうがよいが、予防接種の対象疾患罹患のおそれが大きいときはむしろ予防接種が勧められる。

 イ.免疫産生異常をきたすおそれのある治療を受けている患者放射線治療を受けている患者、長期又は大量の副腎皮質ステコイド剤、抗腫瘍剤等を使用中の患者及びこれらの治療中止後6カ月以内の者には、予防接種を行わない。

 ウ.先天性免疫不全症が判明している患者

  無ガンマグコブリン血症、先天性胸腺形成不全等の患者には、接種を行ってはならない。(ただし、これらの疾患はすでに診断が下されている場合を除いては、これを接種時に除外することは実際上は不可能)

D 接種しようとする接種液の成分に対して、アレルギ−を呈するおそれのある者

 ワクチン成分に対してアレルギ一を有すると考えられる者が対象となる(RAST陽性又は既往の発疹等の有無)。

 一般的なアレルギ−性疾患(気管支喘息、アレルギ−性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギ−性鼻炎等)やアレルギ−(又はアレルギ−体質)といわれているだけでは接種不適当者にはならない。予防接種液中の成分は各接種液に添付されている説明書に記載されているので、接種前に熟読し、予診でチェックすることが大切である。添加物でアレルギ−と関連した報告があるのは、チメロサ−ル、卵成分、ゼラチン及び抗生物質等である。同一ワクチンでもメ−カ一により異なるので、必ずワクチンの添付文書で確認する。

 前回接種液によって局所反応が出た者については、以下の方法によってワクチン液による皮内反応を実施し、事前チェックを行う。また、卵アレルギ−、全身のひどい蕁麻疹及びアナフィラキシ−等の既往のある場合にも同様に検討する。

ワクチン1:10希釈液を用いて

皮刺試験(pricktest)

ワクチン1:100希釈液を用いて

皮内反応

ワクチン規定量を皮下注射して20一30分間察する。

(HermanJ.J他・J.Pediatrics102,1983)