§ カンガルーケアー
1979年コロンビアのボゴダで始められた低出生体重児のケアーで、裸の児を母親の 乳房の間にいれ衣服で覆う事で(図18)、

母子間の長期かつ連続的な皮膚接触を図り、 母乳育児を促進し、早期退院をはかる方法である。背景に医療資源の貧困があり、

定員過剰・医療器材不足・スタッフ不足のため一つの保育器に2-3人の児を入れざるを得ず、 その結果交差感染が蔓延し多く

の児が感染死していた。また早期の母子分離によって愛着形成が不十分なため退院できても養育遺棄につながることもあった。

(乳児を母の胸に入 れるという保育方法は過去にアンデス地方に広く行われていたようで、日本やアイヌなどでもあったようで

ある。)この方法で児が安定したら体重に関係なく退院させ週2回の外 来チェックを行っていくという方法である。

この結果低体温・交差感染・栄養不足による死亡が激減し、養育遺棄も減少した。 当初多くの批判もあったが、この方法

はその後全世界に広がっていった。発展途上国では低出生体重児の死亡率の劇的な改善が報告されている。1983ユニセフは
このケアーを発展途上国で推進するため「保育器に低出生体重児を収容する代わりに、母親の乳房 にぴったり接触させる。

これには科学的技術は必要なくコストもいらない。カンガルーケアー導入前は1000g未満の未熟児の全員が死亡していたが
今ではその4分の3が救命され ている。1000-1500gの低出生体重児の死亡率は70%から10%に低下した」と宣言した。

先進国においては、医療資源の豊富さから逆に妨げられている母子愛着過程を取り戻す ものとして位置づけられている。

その中で生理的には体温維持・呼吸循環系の安定・児のストレス軽減に基づく余剰エネルギー消費の軽減などが証明され、

心理的な効果として児の静睡眠が増しNICUの環境刺激から受けるストレスが軽減される・母にとっては女性 として母親と

しての自信喪失や早産となったための罪責感・傷つきからの回復が指摘されている。 日本においても広く行われているが、

その母子関係に及ぼす影響の評価についての報告は少ない。2001年北島らはカンガルーケアーを体験した児11組と開始前半

年間の(体験しなかった)14組を1歳半検診での行動観察で比較した。(同意を得た上で母子だけにしている部屋を一定時間

ビデオ撮影し他施設の心理学者にあとでまとめて評価してもらうという方法)その結果児のなく割合が少なく微笑みが多い

・母親の笑いが多く否定や疑問の発言が少ないという点で優位さがみられた。